「すまん。今日は先約があるんだ」
パーシヴァルが言うと、バーツは肩を落とした。
彼には悪いが、知らせもなく約束を違えればクリスを心配させてしまうだろう。それでは彼女がかわいそうだ。
「ちえー……お前なら、格闘のプロだし頼りになると思ったのにさ」
「悪い。明日の夜には手伝ってやるからさ」
軽く頭を下げると、バーツはため息をつく。
「ま、しょうがないか。クリスさんのところに行くんじゃあなあ」
「……! なんで知ってるんだお前は」
パーシヴァルは幼なじみを睨んだ。彼女とのことは、騎士団はもちろん、バーツにだって言ってない。バーツはくすくすと笑った。
「つきあい長いもん、お前の好みがわからないわけないと思うけど?」
「これだから幼なじみは」
軽くためいきをつくと、バーツはにっ、と笑った。
「ま、がんばれ、パーシヴァル」
「ああ。じゃあ明日な」
バーツに見送られて、パーシヴァルは畑を後にした。
城の裏手へと進んでいくと、湖が見えてくる。
(さてあとは……)
どうやって人に隠れて壁を登ろうか、と考えていたときだった。
どどどどどどどどどどっ。
(ん?)
背後から、地響きが近づいてくる。
「パーシヴァル、危ない!!」
別れたはずの、バーツの声がおいかけてきた。
振り向くと、茶色い何かが迫ってきている。
「う、わあっ!!」
疾風、と呼ばれる彼の反射神経も、野生の獣の勢いにはかなわなかった。茶色い物体に突進されて、パーシヴァルははねとばされた。受け身もとれずに地面にたたきつけられる。
「パーシヴァル!! 大丈夫か?!! 畜生、あの猪め!!」
バーツがパーシヴァルの側に駆け寄って、そう叫んだ。さっきの茶色い物体は猪だったらしい。
(そう……か、バーツの畑を荒らしていたのは……猪か……)
激痛で朦朧とする頭で、パーシヴァルはそう考える。
だが、思考はそこまでだった。
「パーシヴァル、おい、大丈夫か?! パーシヴァル!!」
気絶したパーシヴァルは、その後三日間、生死の境をさまようこととなった……
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