地下二階に下りるために、パーシヴァルはエレベーターのボタンを押した。ちりりん、と可愛らしい音がして、すぐに籠が昇ってくる。
「下へ参ります」
落ち着いた声で、エレベーターガールがパーシヴァルを迎えた。
「地下二階へお願いできますか?」
「ええ、喜んで。地下二階へ参ります」
ちりりん。
すぐにエレベーターは動き出した。
「こんな遅くにまで、シズさんも大変ですね」
パーシヴァルが声をかけると、シズはちょっと振り向いて微笑んだ。
「これが仕事ですから。それに、もう今日はこれでおしまいですし」
「そうなんですか?」
「ええ。機械のメンテナンスをして、燃料をあげてから寝ますの」
「燃料?」
パーシヴァルは首をかしげた。
「ええ……そろそろ待ちきれなくなっているでしょうから……」
前を向いたままのシズが、笑った、ような気がした。
同時に、地の底から野太い悲鳴のようなものが響いてきた。
獣のような、雄叫びのような、鋭い声にパーシヴァルはぞっとする。
意味がわからないだけ、戦場で耳にする断末魔の叫びより性質が悪かった。
「今の……は?!」
「あらあら、こらえ性のない……」
くすり。
パーシヴァルに背中だけ向けて、シズは、今度ははっきりと笑った。
「シズさん、今のは一体何なんですか!」
ちりりん。
パーシヴァルが叫んだとき、ちょうどエレベーターは地下二階に到着した。
「地下、二階でございます」
「し、シズさん」
シズの笑い顔に追い立てられるようにして、パーシヴァルはエレベーターから出される。扉が閉まる瞬間、微笑んだままのシズが『おしおきしなくっちゃ』とこっそりつぶやいたように見えた。
今まで、あまり考えたことはなかったのだが。
この城のエレベーターの動力というのは…………。
「いや、考えないほうがいい!」
パーシヴァルは首を振ると、廊下を歩き出した。
そうだ、今やるべきことはエレベーターについて考えることではない……。パーシヴァルは奥へと進んでいった。
>廊下の奥へ
>戻る