Young Trouble 前編

 目の前の白煙が晴れたとき、目に飛び込んできたのは、見知らぬ光景だった。
「ん?」
 最初に認識したのは、古びたぼろくさい城広い玄関ホール。
 そして、俺を驚いた表情で見つめる五人の人物。
 見知らぬ彼らは、皆一様に驚いたような、困ったような顔をしていた。
 誰だ? こいつら。
 っていうか、ここどこだ?
 俺は辺りをちゃんと見回そうと体を動かし、そして自分自身に違和感を感じた。
 いつも纏っている長いマントの感触がなかったからだ。
「……え?」
 驚いて自分を見下ろすと、何故か俺は見たこともない緑色のジャケットを着ていた。肩に巻いたマフラーも、模様は同じだがいつもつけてるやつじゃない。腰につけている短剣だけが、愛用のもので、それが余計にわからない。
 何だこれは?!
 反射的に装備を確認しようとした俺は、背に更に違和感を感じて血の気がひいた。
 背中に……いつものアレの感触がない。
 ぱ、ぱ、と背に手を回してみるが、緑のジャケットの下には、薄手の鎖帷子の手触り以外、何もなかった。
 いつもいつも、その狂気に飲み込まれやしないかと、不安になりつつも持ち歩き続けていた魔剣グローサーフルス。自分自身の戒めと、それが他者に渡ったときの危険を考え手放すこともできなかった、あの剣が。
「……」
 俺は青ざめた顔のまま、もう一度辺りを見回した。
 五人の人物は、まだ俺を呆然と見ている。
 一人は輝くような銀の髪に、アメジストのような瞳をした、美しい白銀の鎧の女騎士。
 一人は捨てられはしないかとおどおどしている子犬のような瞳をした、茶色い髪の小柄な少年。
 一人は何故か箒を杖代わりに構えてびくびくしている緑のローブの少年。
 一人は白いローブを着た小さな女の子。
 一人は長い黒髪に、緑の丸い瞳が可愛らしい白いローブを着た魔法使いの少女。
 ……? ……緑の瞳の、白いローブの魔法使い……?
「……ビッキー?」
 びく、と魔法使いの少女は体を強ばらせた。
「ビッキー……」
 俺はゆらりと少女の方へと向きを変えた。少女はあとずさる。
 間違いない、トリッキー魔法使いビッキーだ。と、同時に俺の脳裏にビッキー達トリッキー三人娘に振り回された悪夢の一週間の記憶がフラッシュバックする。
 俺はつかつかとビッキーに近付くと迷うことなく怒鳴りつけた。
「ビッキー! これはお前のせいか!!」
「ああああああん、ごめんなさい! ごめんなさーい!」
「ごめんなさいですんだら官吏はいらないの! 今度は何をしでかしたんだ! おにーさんにわかるように説明しなさい!」
「ごめんなさいっ ごめんなさーい!!」
「だからそれじゃわからないだろうがっ! ちゃんと説明しなさいっ」
「ご、ごめんなさいナッシュさん! でもビッキーさんだけを責めないでください! 僕も悪いんです! ど、どどどどなるなら僕も怒鳴ってください!」
 箒の少年がビッキーを叱りつけている俺の前に割って入った。
「いきなり変なところに飛ばされる原因がビッキー以外に作れるわけないだろうが。……って、あれ? なんで俺の名前知ってるんだ?」
 俺は、俺の名前を呼んだ少年をまじまじと見つめた。
 黒い髪、黒い瞳、緑のローブに珍妙な箒。たいがい記憶力のいい俺だが、こんな少年は見かけた覚えがない。
「ナッシュ……? 私達のことは解らないのか?」
 銀色の髪の美人騎士が俺を心配そうに見て首を傾げる。
「ん? ……え? いや。初対面じゃないのか?」
 言うと、美人騎士は茶色い髪の少年と顔を見合わせた。ややあって、茶色い髪の少年がおずおず、とおびえたように俺の前に進み出た。
「僕は、この城の城主のトーマスと言います。えっと……ナッシュさん、今が太陽暦何年か、わかりますか?」
 俺は、嫌な予感に顔をしかめた。
 年号を聞かれるっていうことは、まさか。
「確か太陽暦461年だったと思うんだが」
 言うと、ホールにいた人間全員が困ったような顔になった。
「だいたい15年というところかのう」
 女の子が、その歳にそぐわないほど落ち着き払ってよくわからない計算をする。
「ちょっと、十五年って一体何なんだ!」
「その、ナッシュさんには、とっても言いにくいことなんですけど、今年は太陽暦476年なんです」
「何っ……」
「つまりお前の記憶の15年後ってところだな」
 美人騎士が、俺に真新しいコインを手渡した。そこには、しっかりと太陽暦476年と刻まれている。
「…………っちょ、ちょっと待て! ってことは俺は時間を飛び越え……ビッキー! やっぱりお前だろう!」
「少しはおちつけ!」
 再びビッキーに向き直ろうとしたら、美人騎士に思い切り頭を殴られた。
「痛ぇえええっ!」
「全く、いい年をして女の子を脅すことしかできないのか? 落ち着かんか、この馬鹿者が!」
「そんなこと言ったって、いきなり15年後に飛ばされたんだぞ? 落ち着いていられるほうがおかしいと思う!」
「あのー……そのことについてなん、ですが」
 またもやおずおず、と城主トーマスが俺と美人騎士の間に割って入ってきた。
「何だ?」
「恐らくナッシュさんは15年後に飛ばされたわけではないと思います」
「は? でもここは俺の知っている世界の15年後なんだろ?」
「えーと、その、今の……ナッシュさんがですね、この玄関ホールに現れる直前、ビッキーとロディが同時に魔法を失敗して爆発が起きたんですけど……その直前まで、僕たちにとっての今のナッシュさん、つまり貴方にとって15年後のナッシュさんがいたんですよ。ここ玄関ホールに」
「……? 15年後の俺?」
 まあ……ビッキーに飛ばされるようなことがなければ15年後にも俺はいるだろうな。
「それも今お前が着ている服とそっくり同じ格好で、同じ装備を身につけている状態で、だ」
 美人騎士が補足説明を加える。
 俺は首をかしげた。
「現在の俺が消えて、15年前の俺が出現した? っていうことは……」
「飛ばされてここに来たというよりは、見た目も頭の中も、そっくりそのまま若返ったと言うほうが正しいだろうな」
 小さな女の子が、また厳しく断定する。
「……わ、若返った……? 俺が?」
 中途半端なその事実に、俺は呆然とした。魔法の失敗のとばっちりをくって若返る? めちゃくちゃだ! しかも外見だけ若返ったならともかく、頭の中身まで若返ったんじゃ、やっぱり時空を飛ばされたのと一緒じゃないか!
「若返ったってそんな俺はどうすりゃいいんだよっ!」
「うるさいっ!」
 ごすっ。
 かなりいい勢いで、俺の頭に本が直撃した。しかも角で。
「痛っ……!」
 見上げると、ハルモニアの真っ青な制服を着た少年将校が中央階段から下りてくるところだった。
 滑らかな美貌、淡い茶の髪、透き通るような緑の瞳。俺の記憶(つまり15年前になるんだけど)と寸分変わらない恩人の姿に、俺は絶句した。
「やれやれ、騒がしいと思ったら原因は君かい? ナッシュ=クロービス。相変わらず運がないみたいだねえ」
「ササライ……様?」
「僕の顔はわかるみたいだね。まあ顔が変わってないからなんだろうけどさ」
 身軽に階段を下りてくると、ササライは俺を面白そうに観察した。
 俺はその視線を見返しながら考える。ナッシュ=クロービス? 知らない名前だ。だが、俺がラトキエではなくクロービスと名乗る必要が、どこかにあるのだろうか。
「ササライ様……? 何故ここにいらっしゃるんですか?」
「仕事に決まってるじゃないか。君はぼけちゃってて解らないだろうけど、グラスランドとゼクセンとハルモニアの共同戦線の真っ最中でね。ああそうそう、聞かれるまえに言っておくけど、今の君は僕の手駒だから」
「……そうですか」
 聞き返す必要のない説明に、俺は力無く相づちをうつ。
 つまり、15年間の経緯はともかく今この人の手駒で、それ以上の関係についてはここで言及するなと。
「で、これはいつになったら戻るのかな? ビッキー」
 ササライはくるりと小さな女の子の方を向くと、にこやかに訊ねた。
 って、その子もビッキーって言うのか?
 大きなビッキーと、小さなビッキーの他人のそら似と言うにはあまりに多く存在する共通点に、俺の背中を薄ら寒いものが流れていったが……いいや深く考えるまい。相手はビッキーだ。
「わからんな。なにせ失敗した魔法のとばっちりでこうなったのだ。原因も戻し方もよくわからん。ただ……失敗といっても所詮ビッキーとロディの魔法だから2、3日で元に戻ると思うが」
「成る程、2、3日ね」
 それだけ聞くと、ササライは納得顔でさっさと階段を上って行きはじめた。
「さ、ササライ様、どこへ?」
「僕の部屋だよ。騒がしいから中断したけど、まだ仕事残ってるんだもん」
「俺は……?!」
「三日程度で治るんならどーでもいいよ。現代の記憶ないから役立たずだし。あ、そうそう、三日たって戻ってなくて、その上手駒として使える状態になってなかったら、君はクビだから」
「仕事でこの城に来ていてこんな目にあったんなら労災でしょーが!」
「君の不運まで労災にはいるわけないでしょ」
 ササライはそっけない。
「お……っ、鬼ーーっ!」
 俺の叫びはむなしく玄関ホールに響いた。





「ふーん、紋章についてそんな風に考えていた奴がいたとはねー」
「ああ……まあそうだ……」
 ササライに見捨てられてから一時間後、俺は城の裏手のカフェテラスで美人騎士さんと一緒に飯を食っていた。途方に暮れている俺を、彼女が見かねて食事に誘ってくれたのだ。
 彼女の名前はクリス=ライトフェロー。驚いたことに、ゼクセン連邦の護りの要、ゼクセン騎士団の団長様なのだという。現代の俺とは、この戦争の最中一緒に旅をした友人なのだそうだ(おいしい仕事だよなー)。
 話を聞きながら、口の中のハンバーグを飲み下し、顔を上げるとクリスは苦笑した。
「ん?俺の顔に何かついているか?」
「いや、よく食べると思ってな」
「そうかな?」
「……オムライスとハンバーグ二枚と、肉じゃがと鰈の煮付けと唐揚げとコロッケとトンカツを食って平然としているのはお前くらいだ」
「たまに飯を食いっぱぐれるからな、こういう時に食っておかないと身が持たないんだ」
「成る程、15年前から不運なのは変わらないわけか」
 クリスは笑う。
 15年後の俺と、比べられているのだろうか? なんだか不思議な感じだ。
「15年後の俺ってどんな人間だったんだ?」
「うーんそうだなあ……」
「うわマジで若返ってやがるよ!!」
 かわいらしく首を傾げたクリスの言葉を遮ったのは、遠慮もへったくれもない男の声だった。
 何ごとかと思って声のしたほうをみると、傭兵隊らしい連中がこっちに来るところだった。叫んだのは、その中の一人、三十過ぎのやせぎすのくたびれた男だ。
「ちっきしょーふられ仲間だと思っていたのに、なんだよその見てくれは! 反則じゃねーか!」
「……いきなりふられ仲間呼ばわりするなよ」
 俺は座ったまま、その痩せた男を見上げた。こいつも今の知り合いなんだろうか。っていうか……ふられ仲間って何だよ。
「なんだよ冷たいなー、一緒にグラスランドをかけずり回った仲じゃないかよ」
「あいにく頭の中まで若返ったから覚えてないんだよ」
 友達甲斐のない奴だ、と人の話を全く聞いていない男はしゃがみこんだ。と、隻眼の黒服の男が前に出た(どうやらこいつがこいつらのリーダーらしい)。
「……あまり気にするな。驚いているだけだ」
「ああ。……っとあんたは?」
「俺はゲドだ。しゃがんでいるのがエース」
「あたしたちは辺境警備隊、12小隊さ。あたしはクィーン、……ふーん、随分甘ったるい顔してたんだね」
 つう、と顎をなぞられて向けた顔の先には艶っぽい黒髪の美女の顔があった。歳は二十代後半から三十。きつめのはっきりした顔立ちが魅力的だ。
「クィーン、あまり遊ぶな」
「あらダメ? ゲド」
「……ダメだ」
 ゲドの重い口調に、俺はにやけてた顔を元に戻した。はいはい、そういうことね。ま、こんな美人がお手つきでないわけないか。
 軽くため息をついて、視線を移す。すると、少ししゃがんで俺のことをじいっと見上げている少女に気がついた。
 日に焼けた褐色の肌に漆黒のドレッドヘア。色とりどりの色彩に染め上げられたカラフルな民族衣装から察するに、グラスランドの部族の一つ、カラヤクランの出身のようだけれど。
「なあ、あんたナッシュだよな?」
 少女は俺をじいっと見つめたまま訊ねる。
「ナッシュ……だけど。それがどうかしたか?」
「うっそぉー! 今こんな綺麗な顔してるのになんで15年後ああなるのー? ってことはさ、ジャックが歳とったらナッシュみたいになったり、ゲドとかエースの若い頃がこんな美形だったりするのー?!!!」
 少女の絶叫に、傭兵隊の連中とクリスがこけた。
 っていうかおい!
 ああなるって何だよ!!! 今はこんな綺麗な顔してるのにって何だ! のにって!
 15年後の俺は綺麗な顔してないって言うのかよ!
 ひくひく、と頬を痙攣させながら、クィーンがアイラの肩を押さえた。
「あ、アイラ……人にはもとの素材ってものもあるからね。30過ぎが同じレベルだからって、若いころも同じとは限らないんだよ」
「そうなの?」
「エースが昔美形ってことは絶対ないから」
「クィーン、そりゃないだろーが」
 エースがわめいた。しかし、いつものコトなのか全員すばらしいチームワークで無視する。
「じゃあゲドは?」
「ゲドは昔からかっこよかったに決まってるじゃない。ねー、ゲド」
「……さあな」
「じゃあやっぱりみんな歳をとったらこうなるんだ……」
 うーん、と悩み始めた少女の肩を、ずっと静かに黙っていた水色の服を着ている青年が軽く叩く。
「……美容には、気をつける」
 いやそういう問題じゃないだろ。30すぎでもかっこいいとかそういう結論に持って行けよ。
「オトナの渋みがわからんとはまだまだ子供じゃのう、アイラは」
 紫の民族衣装っぽい服を着た五十がらみの男が、がはは、と笑った。
 ん? 紫の民族衣装? 東方系? ……はて、なんか見覚えがあるんだが。
 俺の視線に気がついたのか、紫の民族衣装の男は、いらずらっぽく笑うと、ヒゲの奥の唇だけで声もなく囁いた。
『師匠を忘れたのか、この馬鹿弟子が』
 ……? 師匠?
 師匠っていえば……
「あ……ワ……」
「儂の名前はジョーカーじゃ。よろしくな、ナッシュ=クロービス」
 今度は声に出して名乗りながら、俺の傭兵時代の武術の師匠ワン(ジョーカー)はにやりと笑った。
 はいはい、今はジョーカーなんですね。ったく、傭兵時代の知り合いはややこしいったら。
 俺は最後に残っていたフライドポテトを口に放り込むと、げんなりとため息をついた。
「しかし、さっきから昔の顔は綺麗なのにって、それじゃ37の俺の顔はどんなだっていうんだ」
 言うと、クリスがくすくすと笑った。
「そうだな、結構人の悪いオヤジになっているかな」
「……オヤジ? 俺が?」
 まあ、37といえばあとちょっとで40だし、オヤジと言われる世代かもしれないが、22の今言われると結構ショックだ。
「なに、あまり不細工にはなっていないさ。そうだな、そのきらきらした金髪が少しくすんで……年相応の顔になったぐらいだ。しゃべれなければまだ美壮年で通らなくもない」
「しゃべらなければなんだ?」
 そして通らなくもないなんだ?
 俺がぼやくと、我慢できない、とクリスが吹き出した。
「す、すまん……つい」
「いいよ、笑って。美人が笑うネタになるんだったら喜んでネタになるから」
「いつも余裕ぶったお前に世話をやかれてばかりだったから、同い年と思うと不思議な感じがするんだ。ふふ……だがナンパなところだけは一緒だな」
「ふうん? クリスはナンパされたんだ?」
 俺は笑ってクリスの顔を覗き込む。クリスも面白そうに笑った瞬間……。
 どすっ、という音がして、テーブルに剣が刺さった。
「な、何っ?!」
 ばっ、と椅子から腰を浮かし、剣の飛んできた方向を見ると(何故かクリスは平然と座ったままだ)、クリスと同じ白銀の鎧にオレンジの騎士服を着た騎士が二人、こちらに駆けてくるところだった。
「おや、はずしてしまいましたか。首をそのまま飛ばすつもりでしたのに」
 二人の騎士のうち、黒髪を風になびかせるようにセットした青年騎士がにこやかに物騒なことを言った。
「クリス様から離れろ! この不埒者!!」
 そして、騎士のもう一人、くりくりの金髪巻き毛の青年騎士が剣を抜きはなって(おい、烈火剣の魔法かけてるだろ、あの剣)吼える。
「あ、あのー……クリスさん? あの二人は何者で?」
 俺が引きつった顔を向けると、クリスはやはり平然と笑ったまま答える。
「ああ、私の部下だ。忠誠心の強いところが玉に瑕でな、私と仲のいいお前が気に入らないらしい」
「気に入らないっていうか、明らかに殺意を持ってるみたいだけど?」
 しかも、あれ忠誠心っていうよりは明らかな男の嫉妬なんですけどー!
「そういえばそうだなあ、あははは」
「あははじゃないって!」
 ……騎士団の団長なんて人間が、普通のちょっと綺麗な女性なんかなわけないよなー。しかも強力な護衛つきかよ。
「まあ、37のお前が日頃から連中をからかっていたつけだ。適当に受けておけ。なあに、22のいきのいいお前なら死なない程度には逃げられるさ」
「37の俺のツケなんか知るかよ!」
 言い合う最中にも連中は近付いてくる。そして俺に斬りつける気まんまんだ。
 グローサーフルスもない今、かなりの使い手らしい彼ら二人とまともに斬り合って勝てるとは思えない。そう判断した俺は退路を探し始める。
 レストランの奥は行き止まり。左手には湖、右手には城の壁。
 奥に城の勝手口らしいものがあるようだが、下手に飛び込むのは危なそうだ。
 となると……。
 俺は辺りを見回したあと、城の壁面に向かって走り出した。間にはジョーカーが立っている。
「ジョーカー!」
 叫ぶと、俺の意図を察したらしいジョーカーが俺に向かって腰を落として下で両手をあわせた。
 たん、とジョーカーの手前で軽く跳ぶと、俺は奴の手を踏み台にして更に跳ぶ。高さをかせいだところでアンカーを発射すると、うまい具合に屋根にひっかかる。巻き戻す勢いに体重をのせ、空中で体を反転させると、屋根の上に見事着地することができた。
「あ、逃げるかこの卑怯者ー!」
「さすがにオヤジのナッシュ殿よりはすばしっこいですねえ」
 騎士達がぼやいたが、知るもんか。俺はそのまま屋根の上を逃げることにした。
 


久々更新、ナッシュものです。
一応ナッシエのつもりですが、
いじられるナッシュが楽しくてだらだら長くなってます。
で、長くなってきたので二つに割りました。
これは早めに更新します〜。


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