(御注意:おちに大人の深読み(?)が必要です)
友人に、教えられたのは、とても簡単な一言。
『パーシヴァルみたいなタイプにはぜったいこういうのがキクって!』
言い切られて、私は困惑した。
それは、本当だろうか?
言葉は簡潔に過ぎて、目的語が存在しない。
『なによ、クリス、私を疑うわけ?』
私は沈黙した。
別に彼女がうそを教えているとは思っていない。
けれど。
そんな簡単な一言で、彼が動揺するだろうか?
言ってはなんだが、相手は百戦錬磨のつわものだ。これしきのこと、なんでもないかもしれない。
大体、子供だましのようなものなのだ。
いい大人が、まさかそんな台詞で。
まさか、ね。
けれど。
けれどけれど。
それで本当に顔色が変わったら、と思うとそれはそれでおもしろい。
いつもからかわれている意趣返しにもなるし。
まさかとは、おもうけど。
そんなたいしたことのない言葉だし。
失敗したら、ごまかせばいいのだ。
だから。
一回だけ。
一回だけ試してみよう。
言うと、友人はにやりと笑った。
「クリス様、だから、私は嫌ですってば!」
「兵たちの娯楽になるから、と前回私を無理矢理舞台にあげたのはどこのどいつだ!」
「確かに私ですけど、それとこれとは問題が別です」
「全く一緒じゃないか!」
ビュッデヒュッケ城にあるゼクセン騎士団の執務室で、クリスとパーシヴァルは怒鳴りあった。常から、まわりがあてられるほと仲のいい恋人達のやりとりは、今や険悪なものへ成り果てている。
「娯楽のために、舞台にあがれ。ほら、一緒の問題じゃないか」
クリスは腰に手を当てて、パーシヴァルを見上げる。パーシヴァルはそれを見下ろした。
「クリス様はいいですよ、ロミオとジュリエットの、ジュリエット。綺麗なドレスを着て、お姫さまを演じる。いい役ですよ? ですが、私の役、わかって言ってます?」
「羊だろう? 狼少年の」
こともなげに言われて、パーシヴァルは肩を落とした。
「……着ぐるみの私が見たいんですか?」
「おもしろそうじゃないか。意外に似合うかもしれんぞ?」
「嫌です」
頑固に言い張る恋人を、クリスは睨んだ。全く、人がドレスを嫌がったときにはおもしろがって言いくるめたくせに、自分となるとこれだ。
「卑怯もの」
「そうですよ」
「わがまま」
「ええ。自覚してます」
「……」
クリスはため息をついた。とにかく、劇には指名されたら参加するというのはこの城のルールだ。城の空気を円滑に保つためにも、炎の英雄のオーダーはとおさなければならない。
しばらく沈黙したあと、クリスはリリィに教えられた『必殺技』を投げることにした。
「パーシヴァル」
「なんでしょう?」
「それ以上駄々をこねるようだと、もう口でしてやらないぞ」
おもしろいぐらい、はっきりとパーシヴァルの動きが止まった。
「……それは、困ります」
言った、その顔からは表情が消えている。クリスはパーシヴァルの顔を手で捕らえた。
「じゃあ、舞台にあがるな?」
「…………了解しました」
「よろしい」
部屋から出ていくパーシヴァルを見送り、クリスは呆れる。
今日初めて、パーシヴァルに口げんかで勝ったのだが……全然嬉しくないのは何故だろう?
あはははははは
くどき文句を書いたあと、
本当にふっとおもいついたのです
下品ですね……
>帰ります〜〜