我、君を愛す。

「おや」
 まとめた書類を持ち、立ち上がったクリスは、その拍子に窓から見えた光景に声を出した。
「どうされました?」
 書類を取りに来ていたパーシヴァルが問いかける。クリスはふふ、と笑って窓を指差した。
「イク殿とフランツ殿だ。仲良く虫の世話をしている……」
「ああ、本当ですね」
 同じように窓を見下ろしたパーシヴァルも笑みを漏らした。虫使いの村の青年と女性の仲むつまじい様子は、城内でも有名だった。
「ああいうのは、ちょっとうらやましいな」
 クリスが言う。
「うらやましい、ですか? 貴女なら、望めばすぐに手に入るでしょう?」
 パーシヴァルの言葉に、クリスが首を振った。
「まあラブレターやらなんやら、もてているように見えるが、私に送られるそれはアイドルに対するファンレターみたいなものだからな。告白とは言わないよ」
「そうですか?」
「見てくれはいいのかも知れないが、騎士団のことやら紋章のことやら、重荷ばかりのこんな女を全て受け入れて、更に愛を語るような男などいはしない」
 クリスは、窓の下を見つめる。背後でパーシヴァルの表情が堅くなったことに気付かずに。
「ライトフェローの家を潰すわけにはいかないから、そのうち婿はとるだろうが、とてもあんなふうにはいかないだろうな……番いの鳥みたいな彼等のようには……」
 ぐい、と腕を掴まれて、クリスは言葉を切った。パーシヴァルの黒い瞳がクリスを見据えている。
「パーシヴァル?」
「忘れていませんか? 私も貴女に愛を告白した一人だということを」
 クリスは苦笑した。
「お前の告白は挨拶のようなものだろう?」
 今度は顔に手を添えられて、強引にパーシヴァルの方を向かされた。至近距離で見つめられる。
「……それは、侮辱しているのと同じですよ」
「何……パーシヴァ……!」
 突然口付けられ、クリスは抵抗もできずに抱き締められた。
 その腕に込められた力と激しい口付けから、言葉よりも饒舌に、そして明確に伝えられる。
 愛してると。
「は……っ」
 数度くり返し、少しは気がすんだのか、パーシヴァル口を離した。混乱するクリスの瞳に視線をあわせる。
「これで、少しはわかりましたか? 私がどれくらい真剣かということが。……私は、重荷も傷も全て含めて、貴女が欲しい」
 混乱するクリスは、言葉が紡げなかった。ただ口をぱくぱくと開いたり閉じたりするだけだ。
 パーシヴァルはにやりと笑うとまたクリスに覆いかぶさった。
「まだお分かりになられていないようだ」
 情熱的な口付けは、その後クリスが『降参』するまで続けられた。


なんかこの後いくとこまでいってそうな……
ゲフン、ゲフゲフ!
すいません、おやじ発言ですね。
今回のタイトルは
オペラ座の怪人のCDを聞きながら
書いていたのでこんなかんじ
>帰ります