「……っの、馬鹿……」
悪態をつく、恋人の声にパーシヴァルは顔をあげた。
柔らかな体温を感じるほどの距離にいるせいか、その先にはぶつかるほどの近さに彼女のアメジストの瞳があった。
「クリス様?」
パーシヴァルが訊ねるが、クリスはむくれたまま答えない。
激務を抱えるゼクセン騎士団のたまの休み。パーシヴァルとクリスは、クリスの私室にて逢瀬を楽しんでいた。
休暇は明日を含めて二日間。久しぶりに、前日までの疲れも、明日への心配もないということで、調子にのって恋人を愛しすぎ……つまりはヤリすぎたのである。
シーツを体に絡めることさえできずに、裸の胸を荒く上下させるクリスの表情は、愛し合ったあとだというのに少々厳しい。
パーシヴァルが苦笑したときだった。
するり、とクリスの腕がパーシヴァルに回された。
「どうされました?」
クリスは無表情のまま答えない。寝転がったまま体をずらすと、そのままパーシヴァルの頭を抱えるようにして抱きしめる。
「ちょっと……クリス、様?」
頭を抱きかかえられ、クリスの胸の谷間に顔をつっこむ形となったパーシヴァルはらしくなく狼狽した声をあげた。
鼻面は胸の谷間に、そして頬にあたるのは豊かで柔らかな双丘。
抱き返そうとして身じろぎしたパーシヴァルは、そこで自分が妙なことになっていることに気がついた。
「っ?」
ぎしっ。
首から上が、全く動かなかったのだ。
体に力をいれ、首を動かそうとするが、絡まったクリスの腕がそれを阻む。(っていうかマジで技かけてませんか、クリス様)
そして、パーシヴァルは更にもう一つ重大なことに気がついた。
「……っ! ……っ、っ!(い、息がっ!!)」
息が、できないのだ。
鼻先から頬を胸で挟まれ、ぴったりと固定され、鼻にも口にも隙間がない。完全に息が詰まっている。
いつもなら極上の肌触りだと感じる、吸い付くような滑らかな肌も、今は逆効果だ。
「……っ! ……っ、……んぅっ!!(クリス様、息が! 息ができませんって!)」
ぴたぴた、とクリスの肩を必死でたたく。その耳に怒りを含んだ低い声が届いた。
「まったく……いつもいつも、人に恥ずかしい真似ばかりさせおって……しかも今日はやりすぎだ! 私はお前ほどそういうことに対する体力はないんだから、手加減くらいしろ」
「……っんっ……(いや、それはクリス様が愛しいからで)」
ぐ、とクリスの手に力が加わった。
「聞いているか? パーシヴァル」
「……(聞いてますけど……だから息が!)」
「次から手加減すると約束しろ! でないとこのままだぞ」
「……っ!!(そんな無茶なー!)」
予想外のクリスの反撃に、パーシヴァルの意識はくらりと遠くなった。
表の一作を書いて、ふと思いついた裏編です。
いたした後だし、どっちも裸だしで、モロの描写はないのですがちょっとアレな感じですいません。
えーと何禁になるのでしょうか(汗)
お胸がある場合は、この技は割と簡単にできるのでお試しあれ。
死因、乳窒息って、激しく情けないですが。
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