ごそごそ、と部屋の中を歩き回るシエラを見て俺は体を起こした。
シーツ一枚体に巻き付けただけのシエラは、何かを探してベッドサイドにかがみ込んでいる。月光の青い光に照らされた白い背中のラインがとても綺麗だ。
「むう……」
探すのを一旦やめて、シエラは体を起こす。ついでにずり下がっていたシーツを胸の上まで引き上げる。
ああもったいない。胸の谷間が見えていたのに。
「シエラ?」
俺が声をかけると、シエラのルビー色の目がつり上がった。振り向いてきっと睨まれる。
「おんしという輩は……」
「何怒ってんだよ、シエラ」
「おんしが散らかし屋じゃということにじゃ」
シエラは不機嫌そうに腕を組む。俺はベッドの上にあぐらをかいて笑った。
俺達がいるのは、ゼクセンの辺境にある古城、ビュッデヒュッケ城の一室だった。相変わらずハルモニアの神官将殿にこき使われる俺のもとに、ふらりとシエラが遊びに着たのが三時間前。久しぶりに惚れた女に会えたのが嬉しくて、抱きしめたままベッドに倒れ込んだのがそのすぐ後。余韻に浸るのにも飽きてきたところだった。
帰る、と言い出したシエラがシーツ一枚体に巻き付けてベッドから起きあがったのだが、問題が一つ発生していた。
「ナッシュ、おんしわらわの下着をどこへやった?」
「さあ?」
俺は座ったままそらっとぼけた。
下着が見つからず、部屋から出るに出られなくなったシエラの目がますますつり上がる。
実を言うと、シエラのトレードマークと言うべき巨大なトランクはこの部屋にはない。目立つから、ということで近くの村に宿をとり、そこに荷物を置いてきているのだ。
だから、換えの下着は当然ない。
「まったくおんしが考えなしにぽいぽいとどこにでも服を放るから……!」
シエラの繰り出してきた平手を、俺はひょいとよけて腕を掴んだ。そのまま体ごと引き寄せようとすると、今度は蹴りがはいる。腹筋を締めたからそう痛くはなかったものの、俺はわざとらしくうめき声をあげてベッドに丸くなった。
「しょうがないだろう? してる時は中身しか見てないんだから。外したあとの包み紙まで気が回らないって」
だいたい、してる時に脱がせた服を畳んで積んでたら、そっちのほうが不気味だろう。
そう言うと、第二の蹴りがやってきた。
俺はさすがにベッドから降りて避難する。何も着てないから、かなり情けない格好だ。
「わかりやすいところに置いておくくらいの頭は働かせよ!」
ベッドを乗り越え、俺の至近距離に立ったシエラは見上げて怒鳴る。
「うーん、それはかなり難しい注文だなあ……」
「どういうことじゃ。たかが置き場所ではないか」
「たかがって言うけどさ」
俺は、シーツごとシエラを引き寄せた。
「こんなに綺麗な女を抱いている時に、他のことを考えろってわけ?」
甘えるように抱きしめると、シエラは身じろぎした。
「こら、やめよ。わらわは帰ると言っておるじゃろうが」
「まだ夜明けまでは時間があるさ」
シエラの体に巻き付いているシーツを引きおとす。直接触れる肌が心地よかった。
「こらナッシュ……」
「もう少し、側にいて」
「これでは少しではないだろうが……こ、……ら!」
本気の抵抗でないあたり、シエラも完全に拒絶しているわけではない。
俺は、こっそりシエラの下着を突っ込んでおいたベッドサイドの隙間をちらりと見たあと、再び彼女の体に溺れこんでいった。
アダルティーナッシエ
ナッシュの小技でシエラさん引き留められるの巻です。
多分このあと、こっそりナッシュが下着を見つけやすいところに
おいておいておくのでしょう。
発見された時が大変ですが!!
んで、おまけの一枚。
試しに下書きの段階からフォトショで描いてみたのですが、
まだまだ修行が必要ですね……。
線がふらふらで、バランスも悪いっす。
むう。
シエラ「このままでは帰れないではないか!」
ナッシュ「ずっとそのまんまでいいじゃないか(良い眺めだし)」
シエラ「……ナッシュ(雷の魔法発動中)」
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