クリス的ナッシュ考察

「いいかげんクリス様にまとわりつくのはやめろ!」  ぶん、と剣を振り回してボルスが叫んだ。烈火の剣士と呼ばれる凄腕の騎士の一撃をひらりとかわして、緑の服を着た三十男は笑う。
「やだなあ、クリスが誰とつきあおうと彼女の勝手だろう?」
「クリス様とお呼びしろ、クリス様と!」
 ぶん、とまた凄まじい勢いで剣が振られる。しかし、完全に頭に血が上ったボルスの一撃など、ナッシュにとって見切るのは簡単だ。再度剣戟をかわしてにやりと笑ってみせる。ボルスの顔に朱が散った。
「この……!」
 光る、右手の紋章。炎がボルスの身を覆った。それを見てナッシュが青ざめる。
「ちょっとまて! それは反則だろう!」
「うるさい! 今日こそは成敗してくれる!」
 烈火剣の紋章を発動させ迫ってくるボルスから、ナッシュは全速力で逃げ出した。

「あーあ、またやってるわね」
 リリィはレストランのテーブルにつきながらため息をついた。正面には先に来ていた友人のクリスと、彼女の部下パーシヴァルが座っている。今朝はボルスを含め、四人で食事をとろうという約束になっていたのだ。
またやってる、とはボルスとナッシュの喧嘩(一方的にボルスが切れているという話もあるのだが)である。烈火剣を発動させたボルスに追いかけられ、ナッシュはそのままどこかに消えてしまっていた。そしてボルスも。
「ボルスの元気のよさには困ったものです」
 走り去っていった友人の食事を、平然とキャンセルしながら、パーシヴァルが言う。リリィはつまらなそうに尋ねた。
「今度は何なの? クリス」
「ん? ああ、パーシヴァルたちと席についているところへナッシュがやってきて、挨拶ついでに『おはようのちゅー』とか言い出したから、ボルスが怒ったんだ」
「そんなこと言ったらボルスが騒ぐのわかってるくせに、ナッシュもよくやるわね」
「あの人のあれはもう癖の域ですから」
 しみじみ、とリリィとパーシヴァルは頷きあう。クリスが苦笑いになった。
「しかしなあ、あいつのああいう行動は半分お遊びなんだから、そう目くじらを立てるものでもないと思うのだが」
「そうですか? 私には結構本気でやっているように見えますが」
「そうよクリス、冗談だとか思ってるうちに掻っ攫われたらどーすんの?」
 びし、といつものようにポーズをつけて指を指されたクリスは、眉間に皺をよせる。
「何を言ってるんだ。大体、あいつには奥方がいるんだぞ?」
「はあ」
 大真面目で言われ、パーシヴァルとリリィは顔を見合わせる。
 それを言ったら、世間に不倫という言葉はないというか、ナッシュはそもそも本当に奥さんがいるのか疑わしいというか、そんな考えはクリスの頭には回らないらしい。
「いつもいつも二言目にはカミさん、カミさんと……恐妻家かもしれんが、やはりあれだけ話題にしたがるということは、相当その奥方を愛しているに違いない」
「クリス……あんたそれ本気で思ってるの?」
「思ってるぞ?」
 言った彼女の瞳は澄み切っている。本気だ。
「むしろ、こんなに長期間奥方と離れて暮らしているのに、片時も相手のことを忘れない、その一途な心意気には尊敬さえしているんだ。パーシヴァル」
「はい、何でしょう」
 いきなり話を振られ、パーシヴァルの顔がひきつる。
「お前もああいうところは見習ったほうがいい。ほかは見習わなくていいが」
「……は、はあ……」
 クリスはパーシヴァルの『今はクリス様一筋です』とか、そんな台詞は聞いてはいない。彼の場合、過去の悪行があるだけに自業自得だったりするのだが。
 リリィが半眼になって聞く。
「じゃあクリス、あんたにとってナッシュは完全に恋愛対象外なのね?」
「当然だ。そんなことになったら奥方がかわいそうじゃないか」
 きっぱり、はっきり。
 一点の曇りのない顔で言われ、リリィはため息をついた。
「天然って、恐ろしい……」
 その評価は在る意味正しい。


なぜうちでナックリが成立しないのか、という話
てか、ゲーム終わって、サイトを巡り
「ナッシュ実は奥さん狂言説」をきくまで
「そっかー、ナッシュに嫁さんができたか。
相手はシエラか?言動が刑事コロンボみたいだなあ」
とのんきに構えていた私は上のクリスなみに純真です

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