「……っ!」
うめき声にも似た声を漏らして、男は動きを止めた。
びくりとキカの中で男自身が震える。
「……ふっ」
キカは男の裸の肩を抱きしめる。男もまた、荒い吐息をもらしてキカの細い体を抱きしめた。
「キカ……様」
ややあって、男はキカの額に軽くキスをすると体を離した。
キカの上からどいて、ごろりと隣に寝転がる。
また大きなため息が漏れた。
「ん……」
キカが身じろぎをすると、男は手をのばして、腕枕でもするようにキカの頭を自分の胸に引き寄せた。
キカは顔をあげた。
そこには、海賊家業をやっているというのに、一向に荒々しさの加わらない、上品な男の顔が見えた。
男は汗ばんで額にはりついた短い漆黒の髪をかき上げると、軽く目を閉じた。
キカもまた軽く目を閉じる。
いつからだっただろう。
シグルドとこんな関係になったのは。
そう、あれは、エドガーもブランドもいなくなり、キカが海賊島を首領として率いるのが定着し始めたころだ。
誘ったのはキカのほう。
ただ軽く「来るか?」と問うたのだ。
しかし、明らかに女の部屋に男を一人呼ぶには遅い時間に。
きまぐれ……に近かったような気はする。
だが不思議と声をかけることにためらいは感じなかった。
シグルドが、軽い男だと思ったからではない。
彼は誠実を絵に描いたような男だ。
しかし、来ると思ったのだ。
声をかければ、必ず。
そしてキカの思った通り、男は当然のように夜中にキカの部屋に訪れ、当然のようにキカに口づけ、キカを抱いた。
それから、この関係は続いている。
キカがふとシグルドに声をかける。
シグルドが部屋に来る。
睦み合う言葉もなく、ただ肌を温める。そんな関係。
恋……ではないと思う。
そんな甘いものは、存在しない。
では何故、自分は男に抱かれ、そして男も自分を抱くのだろう。
考えるのが面倒になり、キカは体を起こした。
やめよう。
そんなことを考えるのはこの関係にふさわしくない。
「シグルド」
酒でも飲むかと問おうとした言葉は瞬間、別の言葉にすり替わった。
「何故お前は私を抱く?」
言ってから、キカは顔を強ばらせた。
ダメだ。
それは訊ねてはいけないこと。
この関係が壊れてしまう。
なのに……
しかし、シグルドはふんわりと柔らかく笑った。
優しく、幸せそうに。
「もちろん、愛しているから抱くのですよ」
「そうか」
キカは苦笑した。
マイナー中のマイナーカップル、シグルド×キカです。
私以外にこんなカップル書いている人を発見したらおしえてください。
でも萌えなんですよ〜。
決戦前の会話で、どこまでもキカ様命なシグルドの台詞とか
戦争後の行く末で「キカのよき理解者として海賊家業を続ける」っていうのを見ると!!
この「理解者」っていうのがポイントなんです!
情熱たっぷりに求めるんじゃなくって静かに後ろでキカを見ていて
苦しいときにそっと支える、そんなシグルドにえらい萌えです。
ちょっと話がアダルティーなんですけど、
具体的な描写がほとんどないのと、
(そのあとの話がメインだし)
裏にはこれを置く場所がなかったのでこちらに置いてます
>戻ります