「……!」
スノウに声をかけられて、はきょとんとした顔で立ち止まった。の半歩先には心配げなスノウがこちらを振り返って見ている。
「何?」
「……半歩。後ろ歩いてるよ」
「あ……」
スノウが半歩先を歩いていることの意味を思い出して、は眉間に皺を寄せて俯いた。
クールークに占領されていたオベルを奪還してから一週間後、達軍はモルド島のすぐ近くである漂流者を発見した。
ラズリルを守るという名目でクールークのラズリル侵攻を許し、結果追放されたもと海軍騎士団長スノウだ。漂流の果てにいろいろとあったのだろう、自分の弱さを認めたスノウはためらいながらもの仲間となることを決めてくれた。
スノウがの側にいること。
それはにとってもいいことだ。
幼いころから、少しいびつな関係とはいえずっと一緒にいた友達が、戻ってきてくれている。それはの滅多に見せない笑い顔を増やしてくれた。
けれど、それには少々問題があった。
「僕はもう君の主人でもなんでもない、友達なんだからさ、後ろを歩かなくていいんだよ?」
「……」
こっくり、とはためらいがちに頷く。
これが、その「少々の問題」だった。
スノウ一家のもと、物心ついたときからスノウぼっちゃまの小間使いであったにはどうしてもスノウを優先してしまう癖がついていたのだ。
いつも歩く時はスノウの半歩後。
スノウのために扉をあけてやり、エレベーターもスノウの後。食事をすれば、スノウのために料理を持ってくる始末。
『リーダーが誰か一人を優先するんじゃない。指揮が乱れる』と、軍師エレノアにも何度か怒られてはいるのだが、こちらはもう癖なのだ。そう簡単に直るものでもない。
一応スノウも意識してを優先させようとするのだが、ほど神経が細くはないせいか、あまりうまくいっているとは言えなかった。
「先、行きなよ」
スノウは、困っているを見て苦笑すると、一歩後ろに下がろうとした。
つまり、の半歩後。
「!」
は、手を伸ばすとそれを押しとどめて首を振った。
スノウはもう主人の息子なんかじゃない。それは確かだ。
けれど、が今度はスノウの主人となったわけじゃない。あくまでも、対等な友達だから。
「……後ろは、だめ」
「じゃあどうしようか?」
うーん、とスノウも首をひねった。
このまま、また歩き出してもまた結局のほうが後ろに下がってしまうだろう。それをさせまいとスノウが歩調を落とすと、結局最終的には二人してものすごくのろのろと歩くことになる。(一度やって不審がられた)
しばらくうなっていたスノウは、とつぜんぱっと顔をあげた。
「そうだ! こうすればいい!」
にこっ、と嬉しそうに笑うと、スノウはの手をとった。そして手をつないで歩き出す。
「スノウ?」
「こうやって手をつないでいれば、どうしたって隣を歩くしかないだろう?」
問題解決! と得意げにしているスノウに、は眉間に皺を深く刻み込んだ。
「スノウ……でもこれ、何か間違ってる気がする」
「そうかい?」
スノウは意外そうな顔をした。
はっはっは、とうとうやっちまいました。
下僕天国、初のBLSS。
(といっても前からシュウ×2主はときどき言ってましたが)
完全にずれてるスノウと、微妙にずれてる4様。
他の部屋の連中と違って、こちらのカップルは、
こういった微妙路線でいくつもりです。
(カップルですらないという場合もありますが)
今回、ドリームツールも使ってみましたがどんなものでしょうね?
ドリーム小説ではないのですが、もともと名前のないキャラなので
こんな形もいいかなあ、と思いまして。
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